キスリングの意味 登山用語

キスリング

キスリングとは、帆布でできた大型のザックで、1960年代まで主流であった。1929年、ヨーロッパ遠征から戻った槙有恒氏と松方三郎が、スイスの馬具職人ヨハネス・ヒューク・キスリングが考案・製作したザックを持ち帰り、帆布屋・片桐商店(当時)の2代目片桐盛之助のもとに、キスリング型ザックの製造を依頼したのが始まりである。

キスリングは、帆布を袋状にして、革の背負いひもを付けたザックである。両サイドに大きなポケットがついている。登山用品のパイオニアとして、日本山岳会をはじめとする登山家に支持され、『M..KATAGIRI 19○○ KANDA TOKYO』の刻印の入ったキスリングを背負うことは、登山をしている者たちのステータスであった。

やがて、欧米からナイロン製の軽くて丈夫なザックが普及するにつれて、キスリングは大容量であるが、形状から使いにくい、肩に食い込むなどの理由で、パッキングが難しい、現在では軽量性が重視され、すべての装備がコンパクトになり、キスリングのようなザックは受け入れられなくなり、衰退していったといえる。全く製造していないわけではなく、片桐商店では受注生産をしている。