単独行者の意味 登山用語

単独行者(たんどくこうしゃ)

単独行者とは、作家の谷甲州の著書で、大正〜昭和初期に活動した加藤文太郎の生涯を史実に基づいて著わしたもの。谷が20代の時に加藤の『単独行』を読んだのがきっかけで、35年の構想を経て、完成させた。

谷の『単独行者』のモデルとなった加藤文太郎は、1905年に生まれ1936年に亡くなった、登山家である。1923年ころから本格的に登山をはじめている。加藤の住まいは神戸の須磨にあり、六甲山が歩いて登れる近さであった。この六甲全山縦走を始めたのが加藤である。当時の登山は、装備、山行、猟師などを山岳ガイドとして雇う登山スタイルが主流で、高級なスポーツであったが、加藤はありあわせの服装に地下足袋という格好で登山していた。

1928年頃から単独行で日本アルプスなどの数々の山に積雪期の槍ヶ岳や北アルプス縦走も行っており、有名になった。1935年には同郷の女性と結婚したが、1936年1月に、パートナーの吉田富久とともに槍ヶ岳北鎌尾根で猛吹雪に合い、30歳の生涯を閉じている。加藤は現在の大衆登山の先駆けといってもいいかもしれない。