1ヶ月に60時間を超える時間外労働は割増賃金率50%

1ヶ月に60時間を超える時間外労働は割増賃金率50%

労働基準法では月40時間、1日8時間を超える労働を「時間外労働」(法定時間外労働)と決めています。労働基準法36条に基づく労働協定によって、就業規則や労働基準監督署への所定の手続きをしなければ、時間外労働はさせてはいけませんし、させるとしても、必要最低限にとどめ、非常に細かい規定に沿った、上限を守って運用しなくてはなりません。

そして、時間外労働を行った場合は、「時間外労働手当」を支給しなくてはならないという決まりも設けられています。1か月40時間を超えて労働した分の時間数については、基本給に、2割5分以上の割増をして賃金を支払わなければならないと決められています。これには、労働者に余分の負担をかけることに対する手当という意味と同時に、雇主側が「賃金さえ払えば、いくらでも残業させ放題で構わない」などの、違法で望ましくない意識を持つことが無いよう、気軽に残業をさせにくい条件を付しているのです。過剰な時間外労働を科すことは、労働者の労働意欲の低下、健康への悪影響が心配されます。事実、過労死の多くが過剰な時間外労働を日常的に行っていた、という調査報告もあります。

にもかかわらず、日本の伝統的な職場環境は、残業を奨励する雰囲気が強く、「なんとなく定時で帰りにくい雰囲気」「同じ部署の社員が、そろって残業をしていて、やらなければ帰れない印象を受ける。」など、自発的居残りを促す会社まであるようです。

このような、暗示による残業指示の結果、1か月の時間外労働の上限を超えてしまうケースも、決して少なくないため、労働基準法では過剰な残業に歯止めをかけるための方策として、1か月60時間を超える時間外労働に対しては5割の割増賃金を上乗せするように定めています。つまり、1か月60時間を超えて残業をしたときは、1.5倍の賃金を受け取る権利が生じるということですね。

働く労働者側も、1か月60時間もの時間外労働は違法なことであるという意識を持って、雇主や上司から残業を命じられたから、と、黙って言うなりにしていてはいけません。残業時間が1か月40時間を超えるようなら、自分でも時間数を算出して給料明細と突き合わせて確認するなど、自分でも法律違反がないかをチェックしましょう。