年棒制の会社で働くと残業代はもらえない?

年棒制の会社で働くと残業代はもらえない?

年俸制とは、「1年間にもらえる賃金の総額を最初に定めて、それを等分(ボーナスなし、12等分とか、16等分して、ボーナスの分を通常のボーナス時期に渡す、など、分割方法はいろいろあります)して、月々、少しづつ払っていく方法です。あらかじめ労働時間などの就労条件も決められていて、それに従って、年棒が決められます。

さて、この時にちょっと気にかかるのは、残業代です。労働時間は月々に決まっているといっても、残業の時間までは、「やってみないと分からない」のが普通ですよね?

「となると、残業はしても残業代は支払われないってこと?」と心配になってしまうのも無理もありません。

労働基準法では、「労働の対価として、賃金は全額払わなくてはならない。」という決まりを設けています。ですから、年俸制でも、月給制でも、働かせたら、雇主はその分の賃金を必ず払わなくてはなりません。従って、「年俸制だから、残業代は払わない。」というのは、完全に違法になります。そもそも、年間の残業時間が何時間になるのか分からなければ、残業代分を年棒に組み入れて計算することはできません。ですから、年棒には残業代は含まれず、月々に行った残業時間を計上して、別途、支払うのが正しい方法となります。労働協定によって、年間一定の残業が義務づけられている場合を除いて、年棒は残業代を含まないもの、と、考えるのが法律的には正しい解釈ということになります。

年俸の中に、一定の残業代や休日出勤手当を含むことは、法律に反してはいません。そのような場合は、雇用契約や就業規則で「年棒には〇万円の、残業手当、休日出勤手当を含む」とすることは合法です。こうすることで、雇主側の事務的な負担も軽減されますし、あらかじめ、見込まれた分の残業や休日出勤をこなす必要があるということが予定できますから、働いている側もスケジュールを立てる面で利便性があります。

しかし、あらかじめ想定された分を越えた残業や、休日出勤を行った場合は、その分は別計算をして支払う必要が生じます。