未払い残業代は2年分さかのぼって支払わなければならない

未払い残業代は2年分さかのぼって支払わなければならない

サービス残業とか、残業カットとか、「残業したのに払ってもらえていない」未払い残業代の話題が後を絶ちません。これも不景気の影響によるものなのでしょうが、働く人にしてみれば、労働の対価である賃金は「全額支給」が大原則。まして残業であれば、割増賃金の対象になるのですから、払ってもらえないことによる不利益は深刻です。

「調べてみたら、払ってもらってない残業代が結構たまってる!」もし、そんな事実が発覚したら、出来るだけ迅速に、証拠をそろえて請求しないと、悪くすれば、1円も請求することができなくなってしまう場合があるのをご存知ですか?

実は、未払いの残業代には時効があり、時効が過ぎたものについては請求権が消失してしまう、という規定があるからなんです。

残業代だけでなく、未払い賃金などの労働債権は、全て請求の時効が決められています。その期限は労働基準法では「発生から2年」となっていて、時効を過ぎるまで請求を行わなかった場合、および、時効を過ぎてから請求をされた場合は、雇主は支払いに応じなくても構わないということになっています。これは、残業の合意や賃金の授受については、労働者側にもある程度の自己管理責任がある、という意味で「相当長い期間、放置しているのは労働者側も無責任」という意味合いと言われてきました。

しかし時代の流れとともに、悪質で確信犯的な残業未払い、「黙示的残業の強要」といわれる、言葉以外の指示や威圧的態度で残業を強いる形態が増加している現状から、裁判では、「民法の不法行為による損害賠償請求権に該当する」と判断して、時効を3年と判断する判決も出されています。この場合は、「雇主が、労働基準法を守らなかったという違法・不法行為で労働者が損害をこうむった」という判断がされています。

また、労働基準法では2年が時効の原則ですが、労働審判や訴訟を提起すると、「時効の中断」という規定が適用されて、審判や訴訟が終わるまで時効がストップします。