社員の自発的な掃除や研修は労働時間に含まれない

社員の自発的な掃除や研修は労働時間に含まれない

オフィスはみんなの共同作業所であり、パブリックな空間です。できれば、いつでもキレイにしておきたいものですね。そういう気持ちから、自発的に、気付いたときに清掃をする、なんて場面が働いている時には一度や二度ならずあることでしょう。

さて、もし、労働者が、雇主(及び、会社の上司など指揮する立場の人)から、指示を受けずに、自発的に掃除を行っている場合、その時間は労働時間に含まれるでしょうか?

基本的には、始業前、特定の時間など、清掃があらかじめ義務付けられたものであったり、指揮監督する立場のものからの指示によって行われているのであれば、それは業務の一環として見なされます。ですから、原則論としては、その清掃が、労働者自身の判断による自発的なものであったのであれば、労働時間とはみなされません。

しかしながら、これにも例外がいくつかあり、法律上の解釈としては、「指揮命令がないから、絶対、労働じゃない」という判断ばかりとは限りません。

一つは、「黙示による指示」といって、「掃除をせざるを得なくなるような、暗黙の言葉によらない指示があった場合」です。つまり、上司を始めとして同僚が、特定の労働者(一人とは限らず、複数であるケースもあります)に対して、言葉でなく態度で(たとえば、「これ見よがしに指先でホコリを撫でて、吹き飛ばしてみせる」「ゴミを見つけて、あからさまに不機嫌な態度で咳払いをしてみせる。」など。)掃除を強いるような行動を行っている場合は、明示(言葉)ではなく、黙示(言葉以外)で、指示を行った、として指揮命令系統の元に行った清掃とみなされます。

これは、近年問題となっている、パワハラなどにもつながる行動であり、非常に判断が難しくなる点でしょう。繰り返し、こうした黙示による清掃の強制を特定の労働者に行っているとしたら、パワハラの判断がされる可能性は非常に高くなります。

もう一つは、指示の有無によらず、随時清掃を行うことが業務遂行の上で必要不可欠であり、上司の指示が不要な条件であるのであれば、これは、清掃が業務に組み入れられた内容の一つになると見なされ、労働時間と判断されます。

実際の判断基準は個別のケースで非常に微妙でグレーな部分も多々あるようです。