タイムカードの打刻時間=労働時間になる?

タイムカードの打刻時間=労働時間になる?

朝オフィスに出勤してきて、多くの方がすることはタイムカードを押すことですね。職場によっては、出勤簿を使っていて、自筆署名及び捺印というところもまだあるかもしれません。いずれにしても、出退勤の時間を把握するために重要な証拠であって、タイムカードの押し忘れは大きな問題として、注意されることだと思います。

さて、タイムカードを朝、押す時間は、一般的に「出社時間」です。タイムカードの打刻欄の上にも「出」「退」とか「出社」「退社」などの文字が入っているのではないでしょうか。つまり、出退勤の時間がタイムカードに記録されているのであって、実際の勤務=労働とは幾分かの時間差があるということです。オフィスビルが巨大な自社ビルで、勤務すべき場所が上階の方になったりすると、ビル内移動時間だけでも結構かかりそうですね。
では、実際の勤務上では、タイムカードの打刻時間をそのまま労働時間として計上しているのでしょうか?

「いや、実際の勤務時間は、作業に着手し始めた時のはず。出社と同時にトイレに立てこもって化粧をする女性だっているじゃないか?」
「ウチのオフィスは狭いし、ドアを開けた途端に用事を言いつけられることだってある。出社=労働時間のスタートで間違っていないだろう。」

などなど、職場によって、ここら辺の環境の違いが実質の労働開始時間との差を生むこともありそうです。

労働基準法を始めとする、労働関連法では、「勤務時間はタイムカードの打刻時間とする」といった、明確な記載はありません。書かれているのは、雇主は労働者の出退勤の管理について、必ず記録し、その記録を補完しなければならない、という義務についてだけです。

しかし、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」という通達があり、これには、 「タイムカード、ICカードなどの客観的な記録を基礎として確認し、記録すること」という言葉が入っています。これは、一見すると「タイムカードの打刻時間=労働時間」と思えそうですね。しかし、注意してみていると、タイムカードの時刻を労働時間として記録すること、とは違う意味であることが分かります。タイムカードやICカードはあくまでも基礎であって、必ずしも、そのまま労働時間として扱わなくても良い、ということです。もちろん、あまりに極端にかけ離れた扱いは困りますが、タイムカードの打刻時間は出退勤の確認として、「実際の作業開始は、全員一斉に午前〇時から」とあらかじめ定め、その時間までは、オフィスの中で数分間自由に過ごしてよい、として就業規則に明記している会社もあります。こういう場合は、一斉に作業を開始し始めた時間が明確に労働時間と言うことができます。

しかしながら、現実的には業務の内容によって、業務開始時刻と決めた時間より早く電話がかかってきて応対をせざるを得なくなったり、接客業などの場合は、制服に着替えた途端に仕事開始というところだってあります。そんなわけで、実情に応じた対応が各事業所ごとに求められます。もしも、前述のように、一斉作業開始を労働時間と定める場合は、タイムカードの打刻時間よりも、作業時間が短くなりますから、労働者に労働時間以外に絶対仕事をさせない、厳密な労務管理ができていなければなりません。