給料の前借りって可能なの?

給料の前借りって可能なの?

お金が足りない!という事態は人生で一度は経験します。思わぬ事故や病気、身内の慶弔事で包まなきゃならない、とか、事情は様々であっても急な物入りは一生に一度や二度は起こるもの。手元にお金があればよいですが、ゆとりのない場合は、「前借りしかないかな…」ということになるかと思います。

でも、ちょっと待ってください。前借りを申し入れるのはいいんですけど、それが承認されるとは限らない、ということをご存知ですか?

労働基準法では、給料の前借については、「出産、疾病、災害その他の緊急の用に充てる目的」の場合、請求に応じて賃金を支払わなくてはならない、と定めています。ですから「給料の前借り」は、「緊急事態の救済」という点で合法ですし、雇主側はこれに応じる義務もあります。請求されたのに応じなかった場合は、雇主側が違法行為を行っていることに当たります。本来、賃金は働く度に払うべきところを、事務処理などの都合を軽減するために、月払いにしてもいい、という形をとっている訳です。雇主は労働者の賃金をまとめて払うべく預かっている状況ですから、その一部を先に渡すことには問題がありません。

ただし!「賃金」であるところが、ミソ。労働基準法では前借りを認めるとともに、予約労働も禁止しています。「賃金」とは労働の対価、つまり、「働いた分の給金」です。まだ、働いていない分の賃金は発生していないわけで、その分までを請求することは、労働基準法でいう予約労働に当たり、請求できません。

ですから、給料の前借ができるのは、これまでの働いた分の範囲に限られ、お金を先渡しして、「給料と相殺だから、その分働け」は禁止です。

給料の前借り自体は合法とはいえ、あまりに頻繁に行うとそれはそれで、あらぬ誤解を生じて、雇主の信用を損なう原因にはなるかもしれません。ちょっとしたことで、頻繁に前借することはできるだけ控えて、なるべく給料の範囲内で生活できるような工夫も、社会人の常識のひとつですね。