労働基準法には毎年昇給させなければならないという定めはない

労働基準法には毎年昇給させなければならないという定めはない

かつては「終身雇用」「宮仕え」などと言われた日本の企業も近年の厳しい業況から、リストラのあらしが吹き荒れていますね。転職も増える一方で、良いご縁に恵まれて、同じ会社で1年、2年と長く勤務し続けることができるケースはラッキーなのかもしれません。

長く働いていることのメリットの一つが「昇給」です。英語でベースアップなどとも言われて、多くは基本給の金額が上がることを意味します。職務上の地位が上がる「昇進」とセットになっていることが多く、いわゆる出世=昇給のチャンスという社会認識があるようです。

労働法ではどうでしょうか?労働基準法では、昇給の規定については、雇用契約、就業規則の両方で必ず出さなくてはいけないポイントとして挙げています。賃金の項目の中に、昇給についての規定も必ず触れなくてはならない事項として挙げられているということです。

けれども、労働基準法が決めているのはここまでで、実際の昇給の方法や、割合、額面といった、昇給の実態に直接かかわる内容については、労働基準法およびその他の関連法規では、詳細な取り決めはされていません。簡単に言い換えるなら、「いつ、昇給させるかについては、ちゃんと説明しなさいよ、でも、いくらくらい昇給させるのかの中身については、法律ではノータッチだからね。」ということです。労働基準法では、「毎年昇給を行わなければならない」という決まりも無ければ、「昇給は〇万円とする」といったような金額を指定する要綱もありません。

現実的に考えると、物価は年々上昇するものでも、会社の業況や、社会の好景気、不景気の波などの内外の条件は、不確定要素が多く、法律で一律に規定を設けることができるものではありません。

そのため、昇給の実態は経営陣(雇い主)が自由に決めて良いということになっており、それだけに、毎年労働組合の団体交渉の話題に上りますし、交渉の最優先事項にもあがるわけですね。