業績の悪化を理由に残業代をカットするのは違法

業績の悪化を理由に残業代をカットするのは違法

平成不況などと言われて、なかなか回復しない日本の経済状況。その影響からか、リストラ、サービス残業の横行や、フレックスタイム制に見せかけた、残業カット、ブラック企業の暗躍など、労働者の置かれている状況はなかなかに厳しいものがあります。とはいえ、企業の方も生存競争を勝ち抜いて、何とか生き残らなければならない事情はあるわけで、人件費の削減は重要課題の一つとして、真剣に取り組む必要もあるのです。

そんな中「今年は業況が思わしくなくて、前年比マイナスになった。大変申し訳ないが、来月より残業代をカットさせてもらいます。」なんて通達があったら、あなたはどうしますか?

「会社と社員は一心同体も同然、仕方ない協力すると思って、諦めよう。」でしょうか?それとも、
「冗談じゃない!それはそれ、これはこれ、働いたことには違いないのだから、全額キチンと払ってもらわなきゃ!」となるでしょうか?

これは、労働基準法の「賃金全額支給の原則」を思い返してみれば、簡単に分かると思います。

雇主は、労働の対価としての賃金を原則、通貨で「全額」支払わなくてはなりません。これは、言い換えると「働いてもらったら、必ずその分を支払わなくてはならない。」ということです。残業カットとは、「残業しても、その対価である賃金の支払いがされない。」ということ。これは、労働基準法に反して違法であって、認められるものではありません。

もし、会社が残業代を支払えないほど業況が厳しいのであれば、「残業代を払わないで済むようにする」ために、「残業そのものをなくす」のが、正しい方法です。残業をしてもらわなければ業務が回らない状況であれば、配置転換などで、より効率的に業務を進める方法を検討しなくてはなりませんし、会社の運転資金が維持できないほど厳しい状況なら、整理解雇や、賞与(ボーナス)の減額などで人件費を削減するなどの方法も検討しなければならない場合もあるでしょう。

いずれにしても、「経営が苦しい」ということは、残業代カットを容認する理由にはなりません。