届け出た通勤路じゃないと労災は認められない?

届け出た通勤路じゃないと労災は認められない?

労働災害には、「通勤災害」と「業務災害」があります。通勤災害とは、名前のように出退勤の途上で起こった事故に関して労災が適用されるもので、他国と異なる通勤ラッシュなど、日本の特殊な通勤事情を前提として、会社側からの配慮の一つとして特別に作られているものです。

通勤時間は元来、業務時間とは異なり、雇主側の指揮監督下にはいないので、本質的な意味で言えば、通勤中の事故までは、雇主側の責任範囲ではありません。しかしながら、出退勤とは「仕事に伴う移動」に他ならないことから、この時間を「拘束時間」として、労働時間に準じたもの、と考え、労働者保護のためにその時間中の事故も、業務災害に準じて補償されるようにしたものです。

多くの事業所では、労働者に対して、「通勤ルート」の届け出を義務付けていると思います。自宅から、事業所までの通勤ルートを、文字や図面などで書いたものが、事務所に保管されている、というところもありますね。

さて、もし、ここで労働者が、事業所に登録した以外の通勤ルートで、通勤途上に事故に見舞われたらどうなるのでしょうか?届け出たルート以外で起こった事故では、労災は認めてもらえず、自費での治療を余儀なくされてしまうのでしょうか?

心配はいりません、通勤災害の労災認定は、会社に届け出ている通勤ルートとは無関係で、違うルート、違う方法であっても、合理的な通勤ルートであると認められる範囲であれば、労災認定がおります。非常に極端な例では、飲酒運転中に事故に遭っても、労災は下りるのです。(飲酒運転に関する減額はされます)通勤ルートの届け出は、労災対策というよりは、交通費の算出のために用いられる目的の方が主であると言ってもよさそうです。

就業規則で、決められた通勤方法を守らない場合の制裁を定めている事業所も、たくさん見負けますが、これも、労災認定そのものとは無関係で、別個の扱いになります。