労災保険を使うと会社にとって不都合なことがあるの?

労災保険を使うと会社にとって不都合なことがあるの?

勤務中に不慮の事故が発生して怪我をしたから、労災申請をしようとしたら、「労災を使われると都合が悪い。絶対、申請を出すな。会社はハンコなんか押さない。」と、強く言われてしまった。

これっていったいどういう事なんでしょうか?労災は、労働者の勤務中及び出退勤中の不慮の事故で受けた災害を補償するためのもののはず。それなのに、なぜ、「労災を使われると都合が悪い。」などの妨害をするのでしょう?

労災保険は、労働者を仕事中の怪我や、仕事が原因の病気、死亡(業務災害)や、通勤中の思わぬ事故による怪我、死亡事故(通勤災害)による被害から救済するためのものです。ですから、本来は、仕事中の事故が起こって受傷に至ったのであれば、問答無用で会社は証明書を出して、労災で治療と補償をしてもらってくれ、と言うべきなのですが、多くの場合、会社が証明書の発給を拒んだり、労働者が労災を使うことを圧力をかけて妨害するなど、いわゆる「労災隠し」が横行しています。

これは、簡単に言えば、「労災保険を使われると会社が困る事情」があるから、ということです。

まずは、労災の保険料の問題があります。労災保険は、労災事故があると、保険料が上がる仕組み(これを「メリット制」といいます。これは、従業員20人以上の事業所に適用されます。)になっています。ですから、労災事故が起こって給付金の請求がされると、その会社の支払うべき労災保険額が上がってしまい、負担が増えることになるのです。

もう一つは、労働基準監督署による立ち入り検査の問題です。会社(雇主)は、労働者の健康や安全に対して管理する責任があります。これを、安全衛生管理責任といいます。また、同時に安全配慮義務も担っています。労働災害が起こった、ということは、その会社が安全配慮義務を怠っていた可能性が、まず疑われます。

労災事故が発生した場合、必ずその会社が適切な安全管理を行っていたかが調べられます。深刻な労災事故とみなされると、労働基準監督署から直々に立ち入り調査が入ります。その結果、会社側に過失があるとなると、「安全衛生改善計画書」を提出するように指導されてしまうこともあります。