労災保険を使うと労働基準監督署の調査が入るの?

労災保険を使うと労働基準監督署の調査が入るの?

労災事故が発生した場合、会社は必ず労働基準監督署に届け出なければならない義務を負います。

「労働災害の報告が労働基準監督署に出されると、必ず監査が入るのではないか?」
「労災で労働基準監督署から査察受けると、その後で厳しい処罰がされるらしい。」

こんなうわさがあるようで、多くの会社が労災事故についての、労働基準監督署への報告を回避したがる傾向が強いと言われます。TVのニュースなどで、大きな労災事故が発生した後、労働基準監督署が現場の調査を行っている様子が報道されたりすることがあるため、労災事故が警察や税務署の強制捜査と同じような恐ろしげな印象を感じさせるのかもしれません。

確かに、労働基準監督署は、労働者の警察として、強制捜査権を有していることは確かですから、あながち的外れとも言えないのですが、実際のところは、労働基準監督署は100%すべての労働災害について査察を行うという訳ではありません。

労働災害については災害の度合いによって、軽いものから、重いものまで分類がされます。休業4日以上となる「重篤災害」の場合であっても、必ずしも査察が入るという訳ではありません。確実に査察がされるのは、死亡者が出た事故の場合です。

多くの場合は、書面や電話、呼び出しによる事情聴取などが中心となり、事故の原因を調べて、法律違反が行われていないか?を労働基準法、労働安全衛生法に従って調べられます。ここで、事故の原因にかかる法律違反が発見されたときは、是正勧告や、指導票が出されて、指導に従って、法令順守の処置を行うように求められます。

労災事故が発生したにもかかわらず、労働基準監督署に事故の報告をしないままにしておくことや、実際の事故よりも軽く見せるようなウソの報告を行ったりすると、会社には刑事責任が問われるだけでなく、刑法上の業務上過失致死傷罪まで科せられることもあります。このように、労災事故の発生には、非常に厳しい法律上の規制がかけられています。