試用期間の長さは一年が限度?

試用期間の長さは一年が限度?

試用期間は、「採用はされているけれど、正規のものでなく、正社員ではない」という非常に不安定な立場です。試用期間の長さについて、労働基準法を始めとする労働関連法では、試用期間の長さを厳密に決めている条文はありません。これは、個々の業種や事業所によって、教育方法や習熟したと判断するまでの時間などが違っていることを前提として、一律にすることが不適切であろうという判断もされているためでしょう。一般に、企業が定めている試用期間は、2〜4か月程度が平均的な長さとなっています。公務員の場合は、6カ月となっているようです。

試用期間中は、賃金を正規雇用社員より安くするなど、待遇面での違いもあります。社会保険適用事業所であれば、社会保険加入は可能ですが、14日未満の試用期間の時は、解雇予告不要で事実上の解雇である本採用拒否ができます。このように、試用期間中の労働者の身分は非常に不安定であることから、あまりにも長い試用期間は労働者の負担になることから、望ましくないとされています。民法上の公序良俗規定(民法90条)に照らして不適切であるという判断となるわけです。

それでは、「どのくらいの長さが、「公序良俗に反した試用期間」になるのか?」というと、過去の判例から、「1年は長すぎる」と考えられているようです。

昭和59年の「ブラザー工業事件」(名古屋地裁)では、会社側が当初設けた6カ月の見習い期間を経て、その後、更に6〜12か月の試用期間を更新するという方法をとっていました。社員はその間、中途半端な立場に置かれることになり、非常に不安定な状況が長く続くことになる、労働者側にとって、負担が大きいということから、会社側が敗訴しています。

前述公務員の試用期間が6カ月とされていることもあり、これも一つの国が示している指針と考えることができるでしょう。最長でも6カ月程度にとどめることが適切であろうと考えられます。