会社は簡単に労働者を解雇できない

会社は簡単に労働者を解雇できない

労働者の雇用を解くという字を書いて「解雇」といいます。平たく言えばクビのこと。雇主側が、一方的に労働者との雇用契約を解除して、仕事を取り上げるということになります。

元来、雇主側の方が労働者より経済力が強い上、労働者側は、雇主の払う賃金で生計を立てているのですから、経済力を背景としたパワーバランスは、大きく雇主側に有利です。このうえ、解雇も自由自在にできるという状態だと、労働者は生存の方法まで雇主に握られてしまう状態になります。これは、国民の平等をうたった日本国憲法にも反していますし、うっかりしていると、人権侵害やりたい放題の状況も生まれてしまいます。実際、明治憲法の時代は、『あゝ野麦峠』での女工に知られるように、労働者は前金で事実上の人身売買をされて、無残な扱いを受けたり、体を壊して働けなくなれば、あっさりと雇い止めとなるような働き方が蔓延してしました。

そういう危険性を考えて、労働基準法では、雇主があまりに強大な権限を持ちすぎないように、という観点から、解雇について、簡単にできないような細かく厳密なルールを設けています。

解雇については、普通解雇であれ、整理解雇であれ、まず、解雇を避ける十分な方策を採る努力が求められます。雇主側が、解雇を避けるために何の手段も講じないまま、ただ、漫然と現状を放置していて、ある日突然「解雇する」というのは認められません。また、整理解雇では、解雇するべき人員の選抜についても、合理的な理由があることを前提としています。解雇の理由が雇主の感情などに基づくことが無いよう、その理由についても合理性があることを前提としています。

また「明日から来なくていい。」といった解雇の仕方も原則は禁止されていて、必ず30日前に予告するように求められています。予告を行わないで解雇するときは、「解雇予告手当」を支給することも求められています。解雇予告手当は、解雇予告から解雇の日までの日数を30から引いた日数分を、1日当たりの平均賃金にかけた金額で、これを支給することで、事実上、解雇予告を30日前に行ったと同じ効果をもたらすという意味になっています。