内定取り消しされたら損害賠償請求できるの?

内定取り消しされたら損害賠償請求できるの?

内定とは、主に新卒者に対して、翌春の卒業を待って採用することを確定する雇用契約の形態の一つです。内定という言葉そのものは法律上の用語ではなく、民法や労働法などの複数の法律にかかる採用の取り決めについての条文にまたがっているか、あるいは、そのいずれかによって定められている、ということができます。どの条文を根拠にするか?については、長らく法律上の解釈の問題が議論されてきていました。しかし、明確に内定を規定する条文がないため、その運用方法はかなり曖昧でした。

その、曖昧さが問題となっているのが「内定取り消し」という事態です。

内定は、長らく「雇用契約ではない」という解釈がされてきており、企業から見て非常に都合良い運用がされてきました。早い話が、優秀な学生を多数、内定しておいて、そこから、更に、選りすぐりを行い、跳ねだされた学生には突如「内定取り消し」を通知する、ということが横行したのです。その結果、内定承諾書を送って一安心し、就職活動を完了させていた学生が、突如として、また、新たな職場を求めて動き出すことになり、そうはいっても、ほとんどの企業が既に採用枠が開いていない、という状況が起こる結果になりました。

企業の側も、「学生だって、内定をいくつも集めて、その中から会社を選んでいるのだから」という言い分はあるのでしょう。しかし、「ここしか受けなかったのに、内定取り消しされた。」「他を断って決めた会社から、内定取り消しされた。」というケースも多々発生したという実情もあるのです。内定取り消しは失業者の数を増加させる結果にもつながり、2009年3月卒の新卒者については2083名もの内定取り消しが行われました。

このような経緯を考えて、厚生労働省は、2009年より「企業は内定を取り消さないこと」という通達を出し、内定取り消しに歯止めをかける方策にでました。

以降、内定は、予約の雇用契約という解釈となり、その取り消しは解雇と同様に正当な理由を必要とするようになりました。従って、「人が足りている」「人件費が苦しくなった」等の事情で内定取り消しをすることは認められなくなり、正当な理由もなく行われた内定取り消しについては、民事上の損害賠償請求が認められるケースも増加しています。