会社は解雇予告の取り消しを一方的にできない

会社は解雇予告の取り消しを一方的にできない

雇主(会社)が、労働者(従業員)を一方的にクビにする、と通達するのが、解雇予告です。これは、労働基準法で、解雇の30日前に行うという決まりがあり、もしも、30日に満たない期間で解雇を行う場合は、解雇予告手当を支給しなくてはならないとなっています。解雇は一方的に雇主側から労働者へと通達するものであり、労働者側にしてみると、生計を立てる方法を奪われることですから、濫用を避けるために正当な事由失くして行うことができない決まりとなっています。

では、もし、雇主側が「解雇を取り下げたい」「解雇日を変更したい」と考えた場合、一旦、申し入れた解雇予告をなかったことにしたり、変更したりすることはできるのでしょうか?

労働基準法には、解雇予告の取り下げや変更についての規定はされていません。しかし、解雇というのは労働契約の解消を申し入れることです。労働契約(雇用契約)は、双務契約といって、労働者と雇主の両方に権利と義務が生じる契約のため、その変更や解約取り下げについては、民法540条2項の規定に準じて一方の勝手な都合で行うことはできないという決まりになっています。

ごく、常識的に考えてみても、クビを言い渡したけど、気が変わったから、やっぱりやめておく、なんてことが頻繁に繰り返されたら、労働者としてもたまったものではありませんよね。解雇の濫用もはなはだしいですし、身勝手な振る舞いに振り回されてしまいます。解雇というのは、本当に最後の最後に行うことであって、雇主は、解雇に至る前に、それを回避することができないか、最大限努力をしなくてはならないという義務もあるのです。基本的には、一旦口に出したら後戻りできないのが解雇と思って間違いないでしょう。

では、全く、変更や取り下げができないのか?というと、そういうわけではなく、もしも、労働者側が、雇主の取り下げや変更や申し入れに対して、合意をすれば、可能となります。