宗教上の信仰を理由に解雇するのは違法

宗教上の信仰を理由に解雇するのは違法

日本国憲法では基本的人権の一つとして「信教の自由」を約束しています。信教の自由とは、どんな宗教を信じても良いし、それに伴う宗教活動を行う事も自由である、という意味です。

では、職場でこの信教の自由に基づいて布教活動を行ったことを理由として解雇を申し渡された場合は、違法に当たるでしょうか?

こうした案件は判断の分かれるところと言えるようです。大きく分けて、就業規則と、宗教活動を行っているご当人の、職場に対する迷惑度合いによる、と言えるようです。

まず、労働基準法には、職場における宗教活動についての罰則等を定めた条文はありません。従って、宗教活動に限らず、例えば政治活動、署名運動等の活動が、業務の正常な運営に差し支えるほど、迷惑の度合いが大きい場合は、雇主は労働者に対して、懲戒などの処分を行うことができる、という判断が過去、裁判所の判例として出されています。この、訓告や懲戒も、段階的に行われることが大原則ですから、いきなり解雇、というのは難しいものと思われます。

また、信教の自由が保障されているのは、布教活動を行っている労働者だけでなく、雇主も、その他の労働者も同じです。従って、どれほど「この宗教は素晴らしい!ぜひ、入信しなさい!」と強く勧められたって、それぞれに、何を信じるかは自由に選ぶ権利があります。布教活動を行われることで、社内での信教の自由が制限されたり、圧力を受ける社員が現れるとしたら、会社は企業秩序を守る目的から、対策を講じる義務が生じます。

宗教を理由に、一部の業務に携わることを拒否した場合なども、業務命令に従わなかったと判断されます。

具体的には、就業規則で社内の布教活動を制限するなどの条項を作って、休憩時間であっても、過度な活動をしないようなブレーキをかける必要があります。それでも、なお、布教を続け、他の社員にも迷惑が及ぶようであれば、戒告、減給、出勤停止などを経て、解雇という場合もあり得ます。