労働基準監督署の定期監督とは?

労働基準監督署の定期監督とは?

労働基準監督署は、労働者の警察署であり、強制捜査権を持っていて、「立ち入り調査」とか「臨検」と呼ばれる事業所の検査を行うことも、重要な業務の一つです。「臨検」は、税務署や検察庁などが行う立ち入り調査と、本質的には変わりがありません。その対象が、労働環境を始めとする、労働者の権利、生命身体の安全を守ることに特化しているだけで、その権限は、非常に強いものです。

臨検には、いくつか種類があります。テレビドラマやマンガでは、労働者が、労働基準監督署に不当な扱いについて申し出てきて、訴えに基づき、いきなり抜き打ち的に労働基準監督署の職員が訪ねてきて行われるイメージがありますが、実は、このほかに、年度ごとにあらかじめ計画を立ててあり(この計画のことを「労働行政方針」と呼びます)、順番に監督していくように定められている臨検もあります。このような臨検は、「定期監督」と呼ばれています。

定期監督で対象となるのは、主に、過去に労災事故や、臨検を受けたことのある事業所や、建設業、運送業、危険有害業務を行う製造業が対象となっています。特にこの業界に労働基準法違反が多発している、という訳ではないのですが、大型建設機器や、重量物を扱うこと、高所作業など危険度の高い業務があること、身体に有害な物質を扱うこと、など、業務の性質上、労務管理や、労働環境に他の業種以上に、労務管理、安全衛生面での配慮の徹底が必要とされることによるものでしょう。また、これらの業種には、中小企業が多いこともあって、少ない人数でたくさんの仕事を無理にこなそうとする傾向や、一人の人がいくつもの業務を担当しなくてはならなくなったり、人間関係が固定化されやすい、昔ながらの徒弟制度の伝統が維持されやすいなどのため、過重労働が起こりやすい要因になっている点もあります。

定期監督では、労働環境の安全配慮は適切か、労働時間や賃金などの違反はないか?労働者が不当な扱いを受けていないか?などをタイムカードや賃金台帳などの記録に基づいて調査されます。違反が発見されれば是正勧告が行われ、再検査となります。