同業他社への転職禁止は違法?

同業他社への転職禁止は違法?

産業スパイが暗躍する時代、技術の発展スピードも速くなり、それだけに自社で開発した技術の漏えい防止は重要なテーマとなっています。一方で、ヘッドハンティングに代表されるような、主に技術開発系社員の引き抜き工作は、年々、盛んになっており、中には自社の技術を持参することを条件に他社へ転職して厚遇を請求する事件まで起こっています。高額の損害賠償請求訴訟が起こされてニュースになったのをご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。

こうした、同業他社への転職のことを「競業」といいます。独立して自分が同種の事業主になることも同じ意味になります。在職している間は、社員には信義則上、守秘義務や競業禁止義務があるとされています。しかし、日本国憲法では、基本的人権の中に「職業選択の自由」も認めており、退職後の就職先や独立開業にまで口を挟むことは、行き過ぎると人権問題にも発展しかねない心配があります。

しかし、一方で企業の立場としてみれば、競業を野放しにしていたら、虎の子の技術は盗まれ放題となり、会社存続の危機にもなりかねません。従って、多くの雇用契約(しばしば、請負契約でも)企業は自社の機密保護の一つとして、雇い入れの際に競業禁止の特約事項を設けています。一般的には、一定の年数、一定の場所(地域、国)での、一定の業種への転職を禁止し、代償措置を設けて、機密保持に関する同意書などへの署名捺印を求めることが多いです。

この、特約については、しばしば、その有効性が議論され、特に、過重な責任を負わせるものは無効であるという判断がされることが多いです。その理由が合理的なものでない場合は、無効とされ、特に年限を5年以上などにしている場合は認められないものが多い、と言われています。6カ月程度の禁止期間ならば妥当というのが通例のようです。これは、社内での役職等、機密にかかわる立場によっても妥当性の判断が変わります。

いずれにせよ、誓約書に署名することをあまりに強硬に求めるなども、問題となることがあります。良く分からないまま安易に署名捺印することは避け、気になる点があれば、社労士や弁護士に相談してみましょう。